
茶房 花井屋弥右エ衛門
建物の歴史
建物の歴史:弥右エ門が遺した、三世紀を語る木組み
当店の建物が産声を上げたのは、今から約三百年前の江戸中期にまで遡ります。
当時、この地の名主であった初代・弥右エ門が、自ら山に入り、選び抜いた巨木。それを熟練の職人たちが手斧(ちょうな)で丹念に削り出し、釘を一本も使わずに組み上げたのが、この「花井屋」の始まりです。天井を仰げば見える、煤(すす)で黒光りした太い梁。その力強い曲線は、三百年にわたってこの家の屋根を、そして家族の営みを支え続けてきた矜持そのものです。
この建物は、ただ古いだけではありません。 厳しい寒さをしのぐための厚い茅葺き屋根、煙を逃がしながら家を燻し、防虫・防腐を担ってきた囲炉裏の火。生活の知恵が家の耐久性を高め、親から子、子から孫へと、弥右エ門の精神と共に受け継がれてきました。
明治、大正、昭和……激動の時代を経て、令和の今。 かつて家族が囲炉裏を囲んだその場所は、お客様がゆっくりとお茶を愉しむ空間へと姿を変えました。しかし、柱に刻まれた傷や、年月を経て深みを増した木の艶は、今も弥右エ門が生きていた時代の風を伝えています。
三百年という歳月が醸し出す静謐(せいひつ)な空気の中で、どうぞ「花井屋」の長い歴史に身を委ねてみてください。

